04


すっかり陽が暮れ、闇夜が周囲を覆った頃。欠けた月の下で、盃を傾ける影が二つ。

「って、ことが今朝あったんだが。奥州王と知り合いだったのかリクオ?」

「ふむ…」

鴆の持参した酒瓶を傾け、盃に酒を注ぐ桜華はちらりと問われたリクオを見やる。

「あぁ、それと龍騎様の御息女がお前と桜華様によろしく伝えといてくれってよ」

「そうか。…ちぃと会話を交わしたことはあるが、人間にしては中々面白い男だったろ」

「面白いってもんじゃねぇよ。あれがもし敵だったらって考えて俺はゾッとしたぜ」

クツクツと、桜華に注いでもらった酒に口を付けて笑うリクオに鴆は眉を寄せた。

「そういや桜華も初めは怖がってたな」

「それが普通なんです。まったく、リクオ様は怖いもの知らずなんだから」

話を振られた桜華は呆れたようにリクオを見返す。

「おいおい、俺が畏れちゃ終いだろ」

「それはそうだけど…」

どこか納得いかなそうにしながら桜華は持っていた酒瓶を盆の上に戻した。

「ま、それでこそリクオだな。ンで、奥州王とはどこで会ったんだ?」

「青葉城」

「ぶっ―…、ごほごほっ。おめぇ、それって…」

サラリと告げられたとんでもない事に鴆は飲んでいた酒を吹く。

「もったいねぇぞ鴆」

「大丈夫ですか、鴆さん。リクオ様ったら政宗公に会いに青葉城に乗り込んだんですよ」

それでと、事の顛末を桜華が話し始めるのをリクオはゆるりと口端を吊り上げ、愉しげに見つめていた。

機会があればまた会いに行くか。桜華は竜の姫が気になっていた様だし、喜ぶだろ。

相手の都合をまるっと無視したリクオはその夜、鴆を盛大に吐血させ、怒られたのち、呆れられたのだった。



第二夜、了



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